健全な組織の成長を促す上で、内部統制の実現は欠かせません。組織の規模に応じて、内部統制は事実上義務化されていますが、義務の対象外となる企業でも内部統制を実施することで、成長基盤を確固たるものにすることが可能です。この記事では、内部統制を実現する上での課題や、課題解決に役立つツールのメリットについて、解説します。
内部統制とは
内部統制は経営者が組織の健全さと効率性を両立した経営ができるようにするための仕組みを指します。社内の管理体制を高度にマネジメントすることで、整合性と一体感のある組織的な活動が可能になります。内部統制を推進することで、企業は業務上発生している無駄を主体的に解消し、効率の良い手法の確立を促すことができたり、社員のセキュリティ教育を推進してインシデントリスクを回避したり、財務報告の信頼性を向上して組織のブランド力を強化したりすることができます。
内部統制の実現は、経営者一人で達成できるものではなく、課題解決につながる仕組みづくりや、社内を適切に監視できるフレームワークを用意するなどが求められるため、大きな組織改革に発展する場合があります。
内部統制の種類
内部統制には大きく分けて、
● J-SOX(金融商品取引法)をもとにした内部統制
● 会社法をもとにした内部統制
という2つの種類が挙げられます。内部統制は、基本的には前者のものを指す場合が多いのですが、ここでは上記の2種類の違いについて把握しておきましょう。
J-SOX(内部統制報告制度)をもとにした内部統制
J-SOXは、金融商品取引法によって義務付けられている、上場企業を対象とした内部統制です。財務報告の信頼性を高めるために義務付けられており、投資家に対して透明性の高い情報共有と会社経営を実現する上で不可欠な存在です。
J-SOXでは、
● 業務の有効性と効率性
● 財務報告の信頼性
● 関連法規の遵守
● 資産の保全
という4つの目的と、
● 統制環境
● リスクの評価と対応
● 統制活動
● 情報と伝達
● モニタリング
● ITへの対応
という6つの要素を満たした内部統制を実施することが求められています。ただ制度を仕組み化するだけでなく、仕組みを実行するためのIT活用が必須といえ、デジタルトランスフォーメーション(DX)の普及に伴い、内部統制のアプローチにも積極的なデジタル化が必要になっています。
会社法をもとにした内部統制
もう一つは、会社法をベースとする内部統制です。会社法をベースとした内部統制は、J-SOX法をベースとした内部統制とは異なり、こちらは大会社や取締役会を設置している企業を対象としたものです。その目的についても、J-SOX法は財務報告書の信頼性確保だった一方、会社法の内部統制は業務の適正確保を実現するためのものとされています。また、罰則についてはJ-SOX法は5年以下の懲役または500万円以下の罰金が課される一方、会社法の内部統制は罰則がないなど、運用方法に大きな違いがある点に注意しましょう。
内部統制の3点セットとは
内部統制を適切に管理する上では、3点セットと呼ばれる以下の文書を用意することが不可欠です。それぞれの役割について、解説します。
業務記述書
業務記述書は、業務内容を明文化し、文書としてまとめたものです。会社によっては、各部門の業務が口頭によって指示されていたり、共有されたりするケースも少なくなく、人に依存した業務形態が常態化している場合があります。
しかし内部統制の観点から言うと、このような状況は客観性に欠けており、課題の発見も不利になってしまうことから、推奨できる状況ではありません。そのため、内部統制を実現する上では業務記述書を作成し、業務内容を全て紙に書き出すことで、業務を俯瞰的に捉えたり、課題点を発見するのに役立てます。
フローチャート
フローチャートは業務のプロセスを図式にしたもので、業務の流れを容易に掴めるよう促すものです。フローチャートがあることで、その業務が全体のプロセスの中のどの過程にあるのか、どのように業務同士がつながり合っているのかがわかるため、やはり業務改善や業務の把握には欠かせない文書です。業務フローを図式化することで、どんなところに業務上のリスクが発生しているのかを発見することができます。
リスクコントロールマトリックス
リスクコントロールマトリックスは、各業務を洗い出した上で、それぞれの業務に潜在しているリスクを書き出し、その対応方法を記述するものです。業務に対してどれくらいリスクを認識しており、どれくらいリスクに対して対応できているかを明らかにするので、適切なリスクコントロールの推進に不可欠です。
内部統制の課題
内部統制を実現する上では、長年運用を続けていると現れてくる課題に対処する必要も出てきます。内部統制を継続する上でどのような課題が現れてくるのか、確認しておきましょう。
運用フローが非効率なまま改善されていない
内部統制が義務化されて何年も経過すると、周囲の環境の変化により、既存の業務フローが時代遅れとなってしまう場合もあります。すでに便利なツールが出ているのにも関わらず、依然として10年以上前の業務プロセスを継続しているとなると、その業務効率は相対的に低いものとなってしまいます。
運用フローを見直し、適切な内部統制を実現する必要があります。
人手不足の深刻化
以前よりも人手の確保が難しくなったことで、内部統制に回せる人材が減ってしまったケースも散見されます。人手が足りなくなっている原因は、市場から労働人口が減少しているのもさることながら、従業員の離職や業務負担の増大により、対応ができなくなっている点にあります。
業務の効率化によって負担を軽減したり、人材確保や適材適所の配置を実現する必要があるでしょう。
働き方の多様化への対応
従来のオフィスワーク型から脱却し、リモートワークを導入している組織では、従来とは異なる業務プロセスが必要になったケースも見られます。働き方が変わったことで、従来の内部統制の評価基準を変更する必要がありながら、それに対応できておらず、適切なコントロールが失われている問題も起こりうるでしょう。
業務の属人化
内部統制を一部の人間に任せきりにしてしまうと、業務負担はそこに集中してしまい、彼ら以外にその業務を担えなくなる問題が起こり得ます。いわゆる業務の属人化が進んでしまうと、過度に業務が依存し、彼らがいなくなってしまった際に大きな被害を被る恐れがあります。
属人化を脱却するべく、業務の幅広い共有や画一化が必要です。
システムの老朽化
内部統制導入当初のシステムを使い続けていると、次第にOSやソフトの老朽化が進み、サポートが終了してしまいます。サポートが終了しているシステムのメンテナンスには特殊な技術が求められるため、維持管理コストは大きくなっていくばかりです。また、システムの効率が最新のシステムよりも劣るものというケースも珍しくないため、相対的に業務効率が悪化していくこととなります。
内部統制ツールを活用するメリット
このような状況を解消するために活躍しているのが、内部統制ツールです。内部統制ツールは業務フローチャートの作成やメンテナンスの実施、業務記述書の作成に特化したサービスを提供し、担当者の負担削減に努めます。内部統制システムを一から構築する必要がなく、テンプレートを使って素早く文書を作成できるので、日々の業務効率化につながります。
また、ツールを通じて全ての文書や進捗を保管・共有できるため、業務の属人化を回避したり、情報共有スピードの改善につながったりといった効果も期待できます。文書間の整合性も取りやすいので、作成にかかる労力も小さく抑えられます。内部統制の効率化を検討している際には、積極的に導入を検討したいシステムです。
まとめ
内部統制は、企業によっては実施が義務化されているため、必要不可欠の業務と言えます。一方、長期間にわたって内部統制を実施していると、内部統制そのものの業務負担も大きくなってしまいやすいため、適切なタイミングでの改善が必要です。内部統制に特化したツールを導入すれば、そんな内部統制の課題をまとめて解決することができます。負担を軽減してコア業務に集中するためにも、積極的なツール活用をおすすめします。
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