内部統制ツールについて

内部統制を効率化するポイントとは?手順とおすすめのツールを紹介

内部統制とは、健全な企業運営を行うために必要な管理体制を整備することです。
経営企画立案・取締役会の開催・組織再編など、社内管理に関する運営業務全般が、内部統制に該当します。

企業の不祥事に対する世間の目は年々厳しくなっており、内部統制の強化によって法令遵守の意識を高めることが重要です。しかし、人事労務担当者は多くの業務を抱えており、手が回っていない企業も多いでしょう。
そこでこの記事では、内部統制の目的・手順・効率化する方法などに関して、まとめました。

内部統制とは

内部統制とは、企業経営に必要な各種業務がスムーズに進められるよう、環境整備を行うことです。
内部統制の内容には、社内規定整備・各種システムの導入・内部監査の設置など、健全な組織運営に必要な管理業務全般が該当します。

企業の不祥事やコンプライアンス違反に対する周囲の目は、年々厳しくなっているのが現状です。内部統制を強化し、従業員の意識改革や資産の流出防止を図るのが目的です。

内部統制の4つの目的

内部統制の4つの目的

企業会計審議会が2018年に公表した意見書では、内部統制を構築する目的を以下4つに定めています。
● 業務の効率性と有効性の確保
● 財務報告の信頼性確保
● 事業活動に関わる法令等の遵守
● 資産の保全

業務の効率性と有効性の確保

内部統制を強化する目的は、業務の効率性と有効性を高めるためです。
組織全体の生産性が高まれば、少ない労働時間で売上に結びつく業務を多く遂行できます。

社内コミュニケーションの活性化や業務プロセスのデジタル化など、効率性と正確性を高める取り組みが重要です。
また、業務プロセスの見直しによって業務を標準化すると、業務の属人化や品質のばらつきを防ぎます。

財務報告の信頼性確保

財務報告は、自社の財務状況や利益配分をステークホルダーに報告することです。
貸借対照表・損益計算書・キャッシュフロー計算書を作成し、記載した内容をステークホルダーへ発表します。

取引先からの信頼や株主から多額の投資を獲得するためには、財務報告の信頼性・透明性を高める必要があります。

事業活動に関わる法令等の遵守

企業経営や労働関連の法律など、企業の事業活動に関わる法令遵守も、内部統制を強化する重要な目的の一つです。
法令違反に対する企業への視線は年々厳しくなっています。仮に法律違反がマスメディアに報道されると、社会的信用やブランドイメージが低下します。

今後の企業経営が大変厳しい状況に追い込まれるため、組織全体で法令遵守への意識を高めることが重要です。

資産の保全

企業経営では、「ヒト・モノ・カネ・情報」の4つが重要な経営資源だと言われています。
安定的な売上確保や継続的な企業成長を実現するためには、どの経営資源も欠かせません。

これまで蓄積してきた資産を失わないよう、適切に資産を管理・運用していく体制の確立が重要になります。

内部統制の6つの構成要素

企業会計審議会の発表では、内部統制は以下6つの要素から構成されています。
● 統制環境
● リスクの評価と対応
● 統制環境
● 情報と伝達
● モニタリング
● ITへの対応

統制環境

統制環境は内部統制を構築する上での土台であり、企業文化に該当します。
内部統制が正常に機能している組織を作るには、従業員が内部統制の目的や内容を正確に理解していなければなりません。

統制環境には、企業理念・経営戦略・経営者の意向など、企業が掲げるビジョンや目標に関する内容が多く含まれています。
統制環境の質は従業員の意識に大きな影響を及ぼすため、内部統制を構築する上で最も重要な要素とみなされています
内部統制の構築や効率化を行う際は、統制環境の整備を重点的に実施しましょう。

リスクの評価と対応

安定した企業運営を行うには、リスクマネジメントが重要です。
内部統制では、機密情報漏洩やコンプライアンス違反など、事業運営を妨げるリスクに関して分析します。
仮にリスクが発生した場合、企業に与える悪影響や損害額がどの程度かを把握し、解決策を立てます。

また、リスク回避やダメージを最小限に抑えるには、どのような行動が必要かを組織全体で共有しておくことも重要です。

統制活動

統制活動は経営者の指示や業務命令が社内で確実に反映され、指示通りに業務を遂行するための仕組み作りです。
業務マニュアルの整備・管理職への権限付与・業務内容の分担など、業務をスムーズに進めるための環境整備を行います。

また、統制活動は従業員同士の役割を明確化するだけでなく、不正行為を未然に防ぐ役目も担っています。業務の分業化によって、互いの仕事ぶりを監視する効果が働くためです。
仮に不正行為や規律違反行為が発生しても、素早く対処できます。

情報と伝達

情報と伝達は、社内外に発信すべき情報の識別・把握・処理が行われ、情報がステークホルダーへ正しく伝達されている状態を指します。
組織再編や新事業への参入など、経営者からのメッセージは、外部の関係者にも素早く正確な情報を伝える必要があります。

ですが、経営者や株主とコミュニケーションがスムーズに取れない場合、情報共有や意見交換ができません。
情報の識別から発信までに至るプロセスの整備に加え、どのような伝達手段を選ぶかが、重要になります。

また、取引先とのやりとりや従業員の個人情報など、機密情報の取り扱いも情報と伝達に含まれます。
機密情報が流出すると取引先や顧客からの信頼を失うため、細心の注意を払いましょう。

モニタリング

モニタリングは、内部統制が正常に機能しているかを確認する機能です。
業務プロセスで改善点が見つかれば社内会議で発表し、課題の共有と改善を図ります。
会議で決まった解決策は業務プロセスに反映し、課題解決に至るまで継続的な評価とフィードバックを行います。

また、モニタリングで不正が行われた場合、どのような対処法を取るか、決めておくことも重要です。

ITへの対応

ITへの対応とは、各種システムの導入・クラウドサービスの活用・業務マニュアルの電子化など、業務プロセスのデジタル化を指します。
ITツールを効果的に活用できると、スムーズな情報共有や業務効率化につなげられます。

内部統制や企業経営にとって大きなメリットをもたらすため、ITへの対応力向上が今後ますます重要になるでしょう。

内部統制を効率化する手順

内部統制を効率化する手順

ここでは、内部統制を効率化する上での手順と内容を以下の表にまとめました。

表:内部統制を効率化する手順

手順 内容や特徴 備考
1.内部統制の方針策定 ・取締役会で決定された内容を反映することが前提
・部署、業務、機能単位で決定事項を反映
・全社、部署、業務単位で責任者を配置
・評価範囲や管理体制、スケジュールを確認
・会社法に基づき、内部統制の基本方針は取締役会で決定
2.現状把握 ・既存の慣習や暗黙の了解となっている内容を可視化
・業務や部署単位で可視化したリスクの分析と評価
・企業に多大な損害を与えるリスクを重点的に評価
・後で確認できるよう、内部統制の整備に関する状況の記録、保存を徹底
3.評価 ・策定した統制内容をルール化し、運用
・運用状況を定期的に記録
・業務及び決算財務報告レベルなど、各担当者の報告に基づき運用の有効性や効率性を評価
4.見直し ・評価で可視化した課題に対する改善策を検討
・新しい処理プロセスは、報告書に記載
5.報告 ・内部統制報告書の作成

上記のように、内部統制の構築と効率化は簡単な作業ではありません。長期的な視点に立ち再構築を進めてください。

内部統制を効率化する3つのポイント

以下3つのポイントを意識し、内部統制の見直しや運用を効率化してください。
● 現状の内部統制が機能しているかを確認する
● 業務に関連する書類の作成及び修正を行う
● 内部統制の運用プロセスをデジタル化する

現状の内部統制が機能しているかを確認する

効率化のためには、内部統制が正常に機能しているか、どの部分に課題を抱えているか、正確に把握することが重要です。
課題が曖昧な状態で再構築に移行しても、抜本的な対策が立てられません。内部統制が機能不全な状態が続き、不正行為が発生しやすくなります。
統制環境の質は問題ないか、統制活動は機能しているかなど、課題把握に努めてください。

業務に関連する書類の作成及び修正を行う

内部統制の効率化には、業務記述書・フローチャート・リスクコントロールマトリックスを活用します。
評価によって課題が可視化された場合は、新しい処理プロセスを作成します。作成した処理プロセスを下記の書類に書き込んでみてください。

表:各種書類の特徴

業務記述書 フローチャート リスクコントロールマトリックス
概要 ・取引開始~処理に至るまで、一連の業務に関連する情報を記載 ・営業や経理など、部署ごとに業務の流れを図式化 ・業務上のリスクとリスクへの対応策を一覧化
主な記載項目 ・業務内容
・手順
・実子者
・利用したシステム
・業務プロセス
・他部署との関連性
・注意点
・業務別のリスク
・統制内容
・リスクを回避するためのチェック項目
目的 ・リスクマネジメント
・業務内容の理解度向上
・業務内容の理解度向上
・社内コミュニケーションの活性化
・無駄な工数の削減
・リスクマネジメント
・内部統制の重要性を認識

 

内部統制の運用プロセスをデジタル化する

内部統制の運用をオンライン上で行えるよう、ネットワーク環境の整備や各種システムの導入が必要です。
内部統制の申請・承認作業は、これまで紙書類を使ってきました。しかし、新型コロナウイルス感染拡大に伴い、在宅勤務を導入する企業も増えています。

在宅勤務は従業員と企業、双方にとってメリットの多い働き方です。
オンライン上で内部統制を運用できれば、手続きの簡略化や運用負担軽減も望めます。
一方、紙書類で手続きを進めている限り、書類の承認印をもらうためだけに出社が必要です。
効率化によって従業員への負担を軽減できるよう、運用プロセスのデジタル化を進めることが重要です。

表:在宅勤務導入のメリット

従業員 企業
・通勤による心身の消耗回避
・プライベートな時間の増加
・職場の人間関係でのストレス軽減
・集中力向上
・育児や介護との両立可能
・印刷費や管理コスト削減
・ワークライフバランス改善
・優秀な人材の流出防止
・職場内クラスター回避
・自社のイメージアップ

内部統制の効率化につながるツール

内部統制の効率化やデジタル化を実現するツールは、以下の3つです。
BPMツール
● ワークフローシステム
● クラウド型WRP

BPMツール

BPMツールは業務プロセスを可視化し、ミスの削減と業務効率改善を実現するツールです。
モデリングによって業務プロセスの全体像を把握し、改善点の把握や業務プロセスの再設計に努めます。

設計した業務プロセスの動作をシミュレーション機能で確認し、想定通り機能しているかを確かめます。
想定通り機能しない場合は、再度業務プロセスを見直してください。そして、モデリング機能によって、業務プロセスの運用状況を監視します。

表:BPMツールの主な機能

機能 期待される効果
モデリング ・業務プロセスの可視化 ・プロセス全体の把握
・課題の可視化
シミュレーション ・変更した業務プロセスが正常に動くかを予測 ・業務効率改善
・無駄な工数の削減
モニタリング ・業務プロセスの監視 ・設計した業務プロセスの完成度を確認
・必要に応じて再度、業務プロセスを再設計

ワークフローシステム

ワークフローシステムは、社内の申請・承認作業をオンライン上で完結できるシステムです。
経費精算書・見積書・契約書など、各種書類のフォーマットはシステム上に搭載されています。

必要事項を記入した後は直属の上司に提出し、事前に設定した承認ルートに従って処理が進められます。
承認のスキップや不適切な承認ルートを設定した場合は、処理が進められません。不正行為を未然に防ぎ、内部統制を強化できます。

また、申請書作成から承認まで、一連の作業をオンライン上で完結でき、ペーパーレス化や効率化を進めることが可能です。
紙書類への印刷・配布・回覧は必要ありません。また、オフィス外からもシステムにアクセスできるため、隙間時間を有効的に活用できます。

クラウド型ERP

クラウド型ERPは販売管理・生産管理・人事管理など、企業が事業を行う上で欠かせない業務を1つに集約したシステムです。
財務会計や人事情報といった機密情報も含めて管理ができるため、内部統制のプロセスをオンライン上で運用できます。

また、クラウド型ERPは予算に制限がある企業でも導入しやすい点が特徴です。ソフトのインストールやインフラ環境を構築する必要はありません。オプションやカスタマイズをしない限り、月額費用の他に追加費用は発生しません。
さらに、メンテナンスやアップデートもベンダーに一任できるため、ランニングコストを削減できます。

まとめ

内部統制は、業務効率化や法令遵守のために行います。各部署における業務プロセスの無駄を無くし、業務を標準化します。
ヒューマンエラーや業務の属人化を防ぎつつ、業務のスピードアップを図れる点がメリットです。

新たに設計した業務プロセスは、業務記述書やフローチャートにまとめておきます。
また、企業経営に関する法令や機密情報の取り扱いについて学び、法令違反回避につなげるのも内部統制の目的です。

一度、不祥事が起きると社会的信用や市場での優位性が低下するため、組織全体で法令遵守の姿勢を徹底する必要があります。
しかし、内部統制は確認事項や作業量も多く、手が回らない企業も多いでしょう。

この記事で挙げたポイントやツールを参考に、内部統制の構築や運用を効率的に進めてください。

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J-SOX制度の動向と体制構築について

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