内部統制は、財務報告の信頼性向上や法令遵守徹底などを目的に行われます。
目的を達成するためには、自社の内部統制が機能しているかどうかを把握しなければなりません。
また、内部統制を効率的に把握するためには、3点セットと呼ばれる文書が必要です。
そこでこの記事では、3点セットの概要・作成手順・注意点などについてまとめました。
内部統制に必要な3点セットとは
財務報告の信頼性や透明性を高めるためには、内部統制を正しく運用できているかどうか、現状把握が重要です。
内部統制の有効性を確認する上で使用されるツールが、3点セットと呼ばれる下記の文書です。
● フローチャート
● 業務記述書
● リスクコントロールマトリックス
上記の3点セットを内部統制の運用に取り入れると、会計処理でのリスク可視化やコンプライアンス違反の回避につなげられます。
フローチャート
フローチャートとは、業務プロセスを図式化したものです。
業務や取引の流れを可視化し、会計処理の透明性を高められます。会計処理で生じるリスクや内部統制での問題点を可視化する目的としても、フローチャートは活用されています。
業務記述書
業務記述書とは、さまざまな業務内容を文書としてまとめたものです。
一つの業務を完成させるまでに必要な作業内容が、各工程にまとめられています。
プロセスごとに詳細な内容をまとめることで、担当者の理解力向上やリスクマネジメント強化が可能です。
リスクコントロールマトリックス
リスクコントロールマトリックスとは、業務におけるリスクと対応表を一覧化した表のことです。
想定されるリスクに対してのコントロール方法を表にまとめ、内部統制の有効性を確認します。
担当者に素早い行動を促す役割も担っているため、一目で記載内容がわかるような工夫が必要です。
3点セットを作成する手順
3点セットを作成する手順と内容を下記の表にまとめました。
作成する際の参考として、ご活用ください。
表:3点セットを作成する手順
各ステップ | 主な内容 | 備考 |
1.ドラフト作成 | ・フローチャートと業務記述書のドラフトを作成する
・業務手順や利用するシステムなどを明文化する ・業務記述書は現場担当者に、必要事項を確認できる段階まで仕上げる ・部署間の連携やシステムの利用など、業務記述書の内容に基づき業務フローを図式化する |
・効率的に作業を進めるため、作業手順書やシステムのマニュアルなどを集めておく
・担当者が個別に作成しているメモやノートも活用する ・現行資料では読み取れない内容を担当者へヒアリングし、得られた回答を業務記述書に記載する |
2.財務報告に関するリスクとコントロールを設定 | ・業務記述書と業務フローを現場担当者と共有し、修正点の有無を確認する
・内部不正や情報漏洩など、各プロセスでの財務報告リスクを定義する ・定義したリスク内容に対して、コントロールする方法を明確化する |
・リスクを減らせるコントロールの方法が無ければ、業務プロセスを改善する必要がある |
3.リスクコントロールマトリックスを作成する | ・ステップ2での修正点を業務記述書と業務フローに反映する
・反映した内容をリスクコントロールマトリックスに も落とし込む |
・財務報告に関するリスクに対し、どのようにコントロールするかを明記する
・リスクコントロールが正常に機能しているかを判断する |
3点セット作成時の注意点
3点セット作成時は、以下の点に注意が必要です。
● 内部文書の作成は集中型と分散型の2種類から選択
● 記載内容は財務報告でのリスクに関連した業務に限定
● 無駄なプロセスは削減
内部文書の作成は集中型と分散型の2種類から選択
3点セットを作成する上でどのような業務体制を組むか、選択することが必要です。
主なパターンは、集中型と分散型の2種類にわけられます。
集中型は複数の部署から人員を集め、3点セット作成に向けたプロジェクトチームを組むスタイルです。
特定の事業に特化している企業や従業員数が多い企業に向いています。
集中型はチーム担当者が中心となって作成を進めていくため、効率的に作業を進められる点が特徴です。
一方、分散型は業務担当者を中心に、部署単位で文書を作成するスタイルです。
幅広い事業内容を展開している企業、人的リソースに余裕のない企業に向いています。
分散型は、正確性とスピードを高いレベルで保てる点がメリットです。
どちらのスタイルが自社に向いているかを把握した上で、内部文書の作成を進めてください。
記載内容は財務報告でのリスクに関連した業務に限定
3点セットへの記載内容は、財務報告に関する業務やリスクに限定しましょう。
3点セットは業務マニュアルではないため、業務内容の細部にまで記載する必要はありません。
業務内容の細部にまで記述すると、評価ポイントがわかりにくくなるからです。
3点セットを活用する目的は、内部統制の有効性を高めることです。
財務報告のリスクを判別できる内容に仕上がっていれば問題ありません。業務マニュアルと混同しないよう注意しましょう。
無駄なプロセスは削減
ドラフト作成やリスクコントロールを設定する上で、無駄なプロセスは削減しましょう。
たとえば、同じようなプロセスを踏むにもかかわらず、別の業務として扱われている場合があります。
3点セットを効率的に作成するためにも、無駄なプロセスの削減や統合を実施してください。プロセスの簡素化によって、現場の業務も効率化できます。
3点セットの作成方法
3点セットの作成方法は、以下2つの方法から選択できます。
● フォーマットをダウンロード
● 内部統制文書作成ツール
フォーマットをダウンロード
内部統制強化につながるクラウドサービスやITツールを提供している企業から、フォーマットをダウンロードする方法です。
資料請求のみでダウンロードできる場合など、費用がかからない場合もあります。
一方、ドラフトからリスクコントロールマトリックス作成まで、一連の作業をすべて自社で対応する必要があります。
集中型と分散型のどちらを選んでも、従業員は担当業務と並行しながら、3点セットを作成する形になるため、完成するまで多くの時間を必要とするでしょう。
内部統制文書作成ツール
ベンダーが提供している内部統制文書作成ツールを活用し、3点セットを作成する方法です。
ユーザーインタフェースに優れたツールが多く、ITリテラシーの有無を問わず直感的な操作ができます。多くの作業は、ドラッグ&ドロップで完結します。
図形作成・連続配置・部門調整など、工数の掛かる業務を効率化できる点も魅力です。
修正箇所があった場合も業務フローを見直せば、修正内容が業務記述書やリスクコントロールマトリックスに自動で反映されます。
担当者がリスクコントロールマトリックスを一から作成する必要はありません。
また、必要な文書データはツール上で簡単に見つけられるため、管理コストも削減できます。
おすすめの内部統制文書作成ツール3選
ユーザーから厚い支持を集めるおすすめの内部統制文書作成ツールを3つ紹介します。
● iGrafx/SOX+
● QPR J-SOX
● Visio Professional 2021
iGrafx/SOX+
iGrafx/SOX+はユーザーからの評価が高く、導入企業数は2000社を突破した内部統制文書作成ツールです。特徴は、ユーザーインタフェースに優れている点です。
図形挿入・接続線の削除・部門調整など、工数の掛かる作業を自動化でき、サイズ調整も一任できるため、スペースを気にする必要はありません。業務フローの作成に集中できます。
業務プロセスの全体像が明確になっている場合は、図形の連続配置を行うと、作業時間を大幅に削減できるでしょう。
また、業務フローで図式化しにくいポイントやイレギュラー対応に関する内容を業務記述書に残せる点も魅力です。
利用することで、すべての作業をフローチャートで図式化する必要が無くなり、無駄のない業務プロセスに仕上げられます。
公式サイト:iGrafx/SOX+
QPR J-SOX
QPR J-SOXは、内部統制の有効性向上をスピーディーに進められる内部統制文書作成ツールです。
業務フローと業務記述書の一元管理によって、リスクコントロールマトリクスを自動で作成できます。
登録したリスクやコントロール方法が自動反映されるため、担当者が作業を行う必要はありません。
業務フローを見直せば、修正内容も同様に業務記述書とリスクコントロールマトリクスに反映されます。
公式サイト:QPR J-SOX
Visio Professional 2021
Visio Professional 2021は、既存のテンプレートと図形をミックスし、業務フローを効率的に作成できる内部統制文書作成ツールです。メンバーがどの作業をしているかを正確に把握できる点も魅力です。メンバー間で互いの作業の進捗状況をスムーズに共有できるため、生産性向上やコミュニケーションコスト削減を図れます。
公式サイト:Visio Professional 2021
まとめ
今回は以下の4点について解説してきました。
● 3点セットの概要
● 3点セットの作成手順
● 3点セット作成時の注意点
● おすすめの内部統制文書作成ツール
3点セットを作成する目的は、内部統制の有効性向上とリスクを可視化することです。
しかし、はじめて3点セットを作成する担当者になった場合、どこから手を付けていいかわからないという方も多いでしょう。
ぜひ、今回の記事で挙げた手順・注意点・おすすめのツールを参考に、3点セットを作成してみてください。
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