業務プロセス統制について

コーポレートガバナンスと内部統制の違い・関係性をわかりやすく解説

近年、経営者や従業員による不正が明るみになるたびに、コーポレートガバナンスや内部統制の重要性が叫ばれています。両者は同じ意味として使われることが多いですが、厳密には若干異なります。本記事では、コーポレートガバナンスと内部統制の違いや関係性について解説します。具体的な施策例も紹介しているので、ぜひ最後までご覧ください。

コーポレートガバナンスとは

コーポレートガバナンスとは、企業が健全な経営を実現するために、自社や外部機関が構築する管理・監督の仕組みです。東京証券取引所によると、コーポレートガバナンスを以下のように定義しています。本コードにおいて、「コーポレートガバナンス」とは、会社が、株主をはじめ顧客・従業員・地域社会等の立場を踏まえた上で、透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を行うための仕組みを意味する。

引用元:株式会社東京証券取引所「コーポレートガバナンス・コード~会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上のために~」

コーポレートガバナンスの具体的な取り組みとして、以下のようなものがあります。

  • コンプライアンス(法令遵守)の徹底
  • リスクマネジメント
  • 内部監査
  • 内部統制

企業の利害関係者は、株主や顧客、取引先、地域社会などさまざまに存在します。コーポレートガバナンスを保ち経営の健全性を証明することで、社会からの信頼が高まり、企業価値向上につながるのです。

東京証券取引所が原則や指針を示している

コーポレートガバナンスのガイドラインは、日本最大の証券取引所である東京証券取引所が、「コーポレートガバナンス・コード」として公開しています。株式を上場している会社は、基本的にこの指針に沿って企業運営をすることが求められているのです。

具体的には、原則として以下の5つを挙げています。

1. 株主の権利・平等性の確保
2. 株主以外のステークホルダーとの適切な協働
3. 適切な情報開示と透明性の確保
4. 取締役会等の責務
5. 株主との対話

近年は、非上場の中小企業であっても、顧客や取引先からの信用を得ることを目的に、コーポレートガバナンスの強化に取り組む企業が増えています。

参考:株式会社東京証券取引所「コーポレートガバナンス・コード~会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上のために~」

内部統制とは

内部統制とは、企業の不祥事を防止し、業務を適正に運営していくための体制や制度のことです。取締役会や代表取締役社長、監査役会等が中心となり、役員や会社組織の統制を行います。規模の小さい中小企業であれば、経営者や役員が各人へ目を光らせられます。一方で従業員規模が大きな組織では、監視が十分に行き届かず、社内の見えないところで不正が発生しやすくなるのです。

もし、横領や情報漏えい、架空売上の計上といった不祥事が発生すると、企業の信頼が失墜し、株価暴落や多額の損失計上といった問題に直面するでしょう。そのような事態を防ぐために、社内でルールや業務プロセスを整備するのが、内部統制の目的です。

金融庁が基本的な枠組みを示している

内部統制については、金融庁が基本的な枠組みを示しています。具体的には、4つの目的と、6つの基本的要素で構成しているのが特徴です。

【4つの目的】
1. 業務の有効性及び効率性
2. 財務報告の信頼性
3. 事業活動に関わる法令等の遵守
4. 資産の保全

【6つの基本的要素】
1. 統制環境
2. リスクの評価と対応
3. 統制活動
4. 情報と伝達
5. モニタリング
6. IT(情報技術)への対応

内部統制においては、事業の特性や規模、市場の状況など総合的に判断し、個別に構築・運用することが求められています。

参考:金融庁「内部統制の基本的枠組み(案)」

コーポレートガバナンスと内部統制の違い・関係性

内部統制は、コーポレートガバナンスにおける一要素であり、それぞれが密接に関わり合っています。それぞれの特徴や違いは、以下の通りです。

内部統制 コーポレートガバナンス
概要 企業の不祥事を防止し、業務を適正に運営する体制・制度 健全な企業経営のために行う管理・監督の仕組み
管理・監督の主体 取締役会、代表取締役社長、監査役会など 左記に加え、株主総会や会計監査人、弁護士など
影響範囲 会社や利害関係者 会社、利害関係者を含めた経済・社会全体
実施を義務付けている法律・規則 会社法および金融商品取引法 有価証券上場規程

両者は、「よりよい経営を実現するために構築するルールや仕組み」である点は共通しています。一方で、内部統制よりもコーポレートガバナンスの方が、言葉の意味する範囲が広いです。

内部統制においては、業務の効率化や法令遵守、資産の保全など、どちらかというと自社や利害関係者の利害にかかわる範囲で語られる傾向にあります。一方のコーポレートガバナンスは、株主や経済・社会など、社会や市場の要求に適合させる意味合いで使うことが多いです。

内部統制(コーポレートガバナンス)を強化するための施策例

内部統制の強化は、コーポレートガバナンスの実現に直結します。何から取り組めばいいのかが分からない企業は、まず内部統制から取り組んでみましょう。
以下では、代表的な施策例を紹介します。

ITシステムの導入

内部統制の強化施策として代表的なものが、ITシステムの導入です。システムを用いて業務プロセスを標準化・可視化することで、社内での監視が行き届きやすくなり、不正防止につながります。代表的なものには、以下があります。

  • ワークフローシステム
  • BPMツール
  • 勤怠管理システム
  • ERP

例えばBPMツールでは、各業務を工程ごとに分解し、最適な業務プロセスを再構築したり、プロセスを標準化して管理したりできます。このように、ITシステムを活用することで業務の属人化や曖昧さをなくし、会社組織の透明性や健全性を高められます。

職務分掌規程の作成

職務分掌規程とは、職務ごとに与える責任や権限を明確にした規程のことです。具体的には、課長職や監督職など、職務別に「職務分掌表」を作成し、それをもとに部署や部門別に規程を作成します。職務分掌規程を作成することで、各部署や担当者に与える権限の範囲内で行動するよう促せます。職務を逸脱した行動を抑制したり、不正が発覚した際の責任所在を明らかにしやすくなったりできるため、内部統制の強化につながるのです。

業務のモニタリング

社内の業務が適切に運用されているかをモニタリングすることで、内部統制を強化できます。例えば、重要な売掛金について、取引先と自社の担当者の残高確認プロセスをチェックすることで情報の真正性を確認します。営業などの管理職が部下の業務内容を日々チェックするといったやり方も有効です。
また、内部通報制度を設けて、現場の情報を経営者や取締役会、監査委員会などへ直接伝達できるような仕組みを整備すると、ボトムアップ型の監視が可能になります。以上、内部統制を強化するための代表的な施策について紹介しました。より体系的に知りたい方は、金融庁が公開する「内部統制の基本的枠組み(案)」の資料をご確認ください。

コーポレートガバナンスと内部統制の違いや関係性を理解しよう

この記事では、コーポレートガバナンスと内部統制の違いや関係性について解説しました。内部統制はコーポレートガバナンスにおける一要素であり、それぞれで管理・監督の主体や影響範囲が異なります。自社が内部統制を強化すれば、コーポレートガバナンスの実現に近づけられます。まずは、ITシステムの導入や各種制度の策定などを実施して、社内で不正などが起こらないよう対策してみてはいかがでしょうか。

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